茶の主要害虫「チャノコカクモンハマキ」の発生周期を解明
:農業環境技術研究所

 (独)農業環境技術研究所は12月21日、昆虫の個体数の長期捕獲データをもとに発生周期を統計解析する手法を構築し、茶の主要害虫である「チャノコカクモンハマキ」の年周期と世代周期を検出、その発生要因を突き止めたと発表した。害虫の発生予測の高度化や地球温暖化による害虫相の変化の解析などへの応用が期待できるという。
 鹿児島県茶業試験場は、茶の害虫防除に適した時期を決定するため、誘蛾灯に捕獲されたチャノコカクモンハマキ成虫の数を1960年から継続的に取得し、その記録は48年間にわたっている。農環研の研究チームは、今回そのデータを用い、昆虫の成長に特有の現象を反映した変換をデータに施し、周期性を解析した。昆虫は、変温動物なので、成長のスピードは気温の影響を受ける。そこで、成長段階の経過に必要な温度の量(有効積算温量)を計算し、時間軸をカレンダー日から昆虫生理時間に変換、強いトレンドを持つ周期をそこから検出した。
 その結果、世代分割に対応する世代周期と、季節性に対応する年周期の2つの主要なサイクルがあることを見出した。世代分割は、個体数を長期間記録したとき時間の経過と共に一つ一つの世代がはっきりと分かれてピークを形成する現象を指す。
 研究チームはさらに、これらの周期がなぜ生じるのかをシミュレーションモデルで要因解析した。その結果、世代分割の継続には、餌をめぐる幼虫期の競争、いわゆる幼虫密度競争と、成虫が老化することで生殖期間が短くなること、つまり成虫の寿命が短いこと、の2つの要因が必須であり、これに冬季の高い死亡率が加わると、世代周期と年周期の2つのサイクルが生じることが判明したという。
 同研究所では今後、茶園で使われる殺虫剤や気温の上昇が世代分割に与える影響などを継続して解析したいとしている。

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