高分子ナノワイヤーをパルスレーザー照射で作製
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は12月21日、パルスレーザーを狙った場所に照射するだけで、そこに高分子ナノワイヤーを成長させることに世界で初めて成功したと発表した。
 高分子ナノワイヤーは、無機材料のナノワイヤーと比べて柔軟性に優れ、光学的に透明という利点があるため、センサー、発光素子、光スイッチ素子など分子デバイス分野への幅広い応用が期待されている。
 しかし、これまでの数μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)レベルの細かい穴が開いたアルミの鋳型を用いる製法で作れる高分子ナノワイヤーの直径は、細くても300μm程度が限界だった。また、強い薬剤で鋳型を溶かしてナノワイヤーを取り出すので、薬剤に耐えられる高分子しかナノワイヤー化できなかった。
 今回、同機構は、ガラス基板上に必要な高分子の薄膜を作り、その中に付加したい機能を持つナノ材料と光増感色素を分散させ、選んだ場所にパルスレーザーを1発だけ対物レンズを通して照射する手法を開発した。レーザー光の強度や集光位置を詳細に制御し、材料によって異なる最適条件を満たすと、その薄膜に垂直に機能性ナノ材料を含んだ高分子ナノワイヤーが成長する。
 実際、高分子材料としてポリスチレン、機能性ナノ材料として酸化鉄ナノ粒子、それに光増感色素を用いて、酸化鉄ナノ粒子を分散した直径25nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)、長さ約20μmの機能性ポリスチレンナノワイヤーを得ている。この酸化鉄ナノ粒子含有のポリスチレンナノワイヤーは、磁性材料の酸化鉄を含んでいることから、磁場で運動する機能を持つと予想され、鞭毛の様な運動をして人間の血管内を動き回る生体用マイクロマシンの駆動源への応用が期待される。

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新製法で得た酸化鉄ナノ粒子(矢印部分)を含んだポリスチレンナノワイヤーの走査透過電子顕微鏡像(提供:物質・材料研究機構)