ナノ細孔持つプルシアンブルーを合成、セシウム吸着能8倍以上に
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は12月19日、青色の人工合成顔料であるプルシアンブルー(紺青)の結晶構造の中に無数のナノ細孔(メソポーラス)を形成する技術を開発したと発表した。得られるメソポーラス・プルシアンブルーは、セシウム吸着能力が市販のプルシアンブルーの8倍以上あり、土壌中や水中などに拡散した放射性セシウムの除去・回収に活用できる可能性があるという。
 プルシアンブルーは、ゼオライトなどの天然鉱物と並んでセシウムを吸着する能力があることから、研究チームは吸着能のさらなる向上を目指して表面積を拡大するなど新たな合成法の開発に取り組んでいた。
 開発した新技術は、先ずサイズの均一なキューブ(立方体)状のプルシアンブルーのナノ粒子を調整、用意する。これを水溶液中に分散させ、そこに水溶性高分子のポリビニル・ピロリドンを加え、酸を適量加えて撹拌するというもの。こうすると粒子中心部から酸によるエッチングが自発的に始まり、無数のナノ細孔を持ったメソポーラス・プルシアンブルーが得られる。
 新粒子の表面積を調べたところ、1gあたり330㎡以上あり、これまで報告されているプルシアンブルーの中では最大で、市販製品に比べて10倍以上に達したという。このメソポーラス・プルシアンブルーを用いて行ったセシウム吸着実験では、市販のプルシアンブルーの8倍以上のセシウム吸着能が認められたという。
 プルシアンブルーは、鉄のシアン錯体であり、鉄の一部をコバルトやマンガンなどの別の金属に置き換えると、セシウム吸着能力がさらに向上することが期待されている。研究チームは、新手法を今後こうした置換材料にも適用し、今回の成果を実用的なセシウム吸着材開発につなげたいとしている。

詳しくはこちら