衛星データ使いCO2吸排出量推定値の誤差を大幅に低減
:宇宙航空研究開発機構/環境省/国立環境研究所

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と環境省、(独)国立環境研究所は10月28日、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT:ゴーサット)による観測データを、地上観測データと併せて用いると、地上観測データのみから算出される地球(全球)上の月別・地域別の二酸化炭素(CO2)吸収排出量推定値の誤差が大幅に低減されることが分かったと発表した。
 1997年に京都で開かれた「第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)」で「京都議定書」が採択された後、地上・海洋・宇宙での温室効果ガス観測を一段と強化する提案が各国でなされた。
 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」は、これらの条約への貢献を目的とした衛星で、地球温暖化をもたらす二酸化炭素やメタンなどの濃度分布を宇宙から観測するために、一昨年12月JAXAの種子島宇宙センター(鹿児島)から打ち上げられた。
 今回、「いぶき」による二酸化炭素の観測濃度データと、地上測定ネットワークデータの平成21年観測分の公表値とを併せて利用し、平成21年6月から平成22年5月までの12カ月分の全球の月別・地域別の二酸化炭素吸収排出量(正味収支)を算出した。この結果から、月別・地域別の二酸化炭素吸収排出量の推定値に関する不確実性が、地上観測データに「いぶき」観測データを加えることで、従来の地上観測データのみからの算出よりも大幅に低減されることが分かった。
 特に、地上観測点の空白域である南米・アフリカ・中近東・アジアなどの領域における、二酸化炭素収支推定値の不確実性は、「いぶき」観測データを加えることによって年平均値で最大50%程度減少した。
 全球の二酸化炭素収支に関し、衛星データの有用性を定量的に実証した成果は、これが世界でも初めて。
 この「いぶき」観測データの有用性に関する研究成果は、学術論文として10月29日に日本気象学会のオンライン論文誌「SOLA」に掲載された。
 今後、この推定結果を外部の研究者に提供して妥当性の評価・確認をしてもらい、海外の研究機関による解析との比較を行うなどした後、データの一般提供を開始する予定という。

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温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(提供:宇宙航空研究開発機構)