埋め込み型医療器などに好適な「光熱発電素子」を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は10月27日、生体内に埋め込んで体の外から光を当てるだけで発電する「光熱発電素子」を開発したと発表した。光で発熱する特性を持つカーボンナノチューブと熱を電気に変える熱電変換素子を組み合わせることで実現した。心臓ペースメーカーなどの体内埋め込み型や健康モニタリングに使う生体貼り付け型などの医療機器向け電力供給システムなどの実現につながると期待している。
 開発したのは、同研究所健康工学研究部門の都英次郎研究員らの研究グループ。カーボンナノチューブは、直径0.4~50nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)、長さが1,000~数万nmの中空の炭素材料。研究グループは、これをシリコーン樹脂に分散させた複合材料の被膜で熱電変換素子の表面を覆い、4cm角程度の小型光熱発電素子を試作した。この素子に近赤外の光を出すレーザー光を30分間照射する実験をしたところ、レーザー出力に応じて電力が得られた。
 そこで、この素子を実験動物のラットの背中に素子を埋め込み、体外からレーザー光を30分間照射したところ、ラットの体表面温度は素子を埋め込んだ部分で30~40℃程度に上昇。最大で8mV(ミリボルト)の電力が得られることが分かり、体内でも体外と同様の発電動作をすることが確認できた。
 カーボンナノチューブは、互いに凝集しやすいため均一に溶媒中に分散させることが難しく、これまで応用上の制約になっていた。それに対し今回は、カーボンナノチューブの表面に導電性高分子を吸着させると凝集が防げることを見出した。研究グループは、この現象を利用してシリコーン樹脂中に均一に分散させて素子の開発につなげた。

詳しくはこちら

新開発の「光熱発電素子」(提供:産業技術総合研究所)