非接触型の静電気計測技術を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は10月24日、生産現場で様々なトラブルの原因になっている静電気を、高速で位置精度高く計測できる非接触型静電気計測技術を開発したと発表した。対象物の静電気を離れたところからモニタリングできるので、空間的制約の多い生産現場などで威力を発揮するという。
 静電気は、電子デバイスの破壊、フィルムの吸着、製品へのゴミの付着などのトラブルを起こし、生産性低下の原因になっている。特に半導体生産現場では、回路の微細化や多層化に伴うデバイスの静電気放電耐性の低下などから静電気問題が深刻化しており、障害を軽減するため静電気を高速で計測できる技術が求められている。
 同研究所は、静電気を帯びた物体を振動させると電磁界が誘起されることに着目し、誘起された電磁界の変化を測定して物体の静電気量を測定する新技術を開発した。帯電物に音波を当てて周期的に振動させると、それに合わせて静電気の電荷が振動し、電磁界が発生する。これをアンテナでキャッチして静電気の情報に変換するという仕組みだ。
 静電気の計測では、静電気量と正負の電気的極性情報を得る必要があるが、静電気量は電磁界の強度から、また電気的極性は電磁界の位相から取得できる。
 新技術は、[1]誘起された電磁界を全方向で検出できる、[2]音波で物体を振動させ、アンテナで電磁界をキャッチするので離れたところから計測できる、[3]装置構成が簡易で様々な環境に柔軟に対応できる、などの特徴があり、空間的制約の多い生産現場での利用に適しているという。
 また、音波を収束させ物体表面を走査すれば平面の静電気分布を可視化でき、作業員や製品など動いているものに対しても短時間で静電気の状態を検知できるといった利点もある。
 これまで生産現場では、表面電位計が広く利用されてきたが、センサーを測定対象物に近づける必要があったため現場環境の制約を受けたり、付近の帯電物やアースなどの影響を受けやすいといった問題点があった。また、2次元平面の静電気分布計測の高速化は困難であった。
 研究チームは、今後、実用的なシステムを開発すると共に、収束させた音波を高速で走査できる超指向性音響システムを開発し、静電気分布を短時間で可視化するシステムを完成させたいとしている。

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新計測技術によるポリイミドフィルムの静電気分布計測例(提供:産業技術総合研究所)