(独)産業技術総合研究所は5月11日、蛍光ランプ(蛍光灯)に用いられているテルビウムやユーロピウムなどのレアアース(希土類元素)を含む蛍光体を種類ごとに分離する技術を開発したと発表した。蛍光体の再利用につながり、レアアース使用量の低減に貢献できるとしている。 省エネ型の照明機器として近年、レアアースを赤、青、緑色の蛍光体に用いた、いわゆる「3波長タイプ」の高効率蛍光ランプが普及している。一方で、レアアースを使用していない低価格の一般色タイプの蛍光ランプも用いられ続けており、レアアースの供給不安が高まる中で、これらが混在する廃棄物中から各蛍光体を分離・回収する安価な実用的技術の開発が求められている。 産総研は、蛍光体の磁化率が種類によって異なることに着目、電磁石を用いた低コストな分離法の開発に挑戦し、汎用の高磁場勾配磁選機を用いて蛍光体を種類ごとに連続的に分離することに成功した。 高磁場勾配磁選機は、電磁石の間に設置されたカラム(成分の分離などに使われる円筒管)内に金属細線を配置し、そこに発生する誘導磁界によって周辺の磁場に勾配を作り出し、磁性を持つ粒子を細線上に補足するというもの。各種の蛍光体を含む液体をカラム内に流通させると、細線上に磁化率の大きな蛍光体粒子が捕捉され、磁化率の小さな蛍光体粒子は流下する。磁場を除いた後に洗浄液を流せば、細線上に補足された蛍光体粒子を回収できるという仕組みだ。 蛍光体同士が凝集したり、磁化率の高い蛍光体に磁化率の低い蛍光体が巻き込まれて付着したりするなどの課題があったが、分散剤と界面活性剤を添加するなどして分離効率を向上させることに成功した。分離操作を何回か繰り返すとレアアースを含む3色の蛍光体を分離でき、一般色蛍光体の分離も可能という。 今後は、磁選機の磁極構造を改善して磁化率の近い蛍光体の分離効率を高めたり、分離された蛍光体の性能評価などを行い、実用化を目指したいとしている。 詳しくはこちら |  |
上の塊は、赤、青、緑色の蛍光体の混合物。下は、新技術を使って再分離した蛍光体(提供:産業技術総合研究所) |
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