世界初、超小型半導体光ゲートスイッチ素子の開発に成功
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は4月25日、光を使って光の位相を制御する超高速の光位相変調素子を組み込んだ超小型半導体光ゲートスイッチ素子を世界で初めて開発したと発表した。チップ面積は、1mm2以下で、非圧縮ハイビジョン信号100チャンネル相当の毎秒160G(ギガ、1Gは10億)ビットの超高速光信号を同40Gビットの光信号に多重分離できる。超高精細の動画像を同時送受信する遠隔医療サービスなどの実用化に道を開く成果という。
 大容量・超高速通信が可能な光ネットワークの構築を目指して近年、伝送速度を上げるための技術開発が活発化している。時分割多重によって光信号の伝送速度が毎秒100Gビットを超えると、通常の電子回路デバイスでは信号処理が追いつかないため、電子回路でも処理できる速度にまで下げるデバイスが必要になる。今回開発した超高速光ゲートスイッチは、その鍵を握る素子で、高速化のために多重化した信号を元の信号に戻す、いわゆる多重分離の働きをする。
 産総研では、先に光によって光の位相を超高速制御できる全光位相変調効果現象を発見し、それを空間光学系で実現した光スイッチ装置を作製、スーパーハイビジョン信号の送受信に成功している。しかし、それは筐体が大きく、機構が複雑といった難点のほか、40Gビット信号を4チャンネル時間多重した160Gビット光送受信装置は4個の光ゲートスイッチをモジュール内に必要とし、それらの調整が非常に困難、などの問題点があった。
 そうした課題解決を目指して光ゲートスイッチ素子の小型・集積化に取り組み、今回、全光位相変調効果を持つ光導波路と干渉計を構成する光回路とをリン化インジウム基板上に集積化し、全半導体光ゲートスイッチ素子を作り出すことに成功した。チップ面積は、0.3mm2で、先に開発した空間光学系の同スイッチの干渉部面積に比べ1万分の1以下のサイズ。多数の光ゲートスイッチ素子を含むウエハーを、ドライエッチング法で1回加工するだけで集積化できるので経済性にも優れるという。
 高精細動画像の同時送受信などができる超高速光送受信装置への応用が期待される成果であり、その実現を目指して産総研では今後、光ゲートスイッチの集積度を上げると共に、レーザー光源、光増幅器、受光器、電子回路の集積化も進めたいとしている。

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