(独)産業技術総合研究所は4月26日、貴金属や金属酸化物の触媒を使わず、炭素材料のグラフェン(炭素原子のシート)だけを正極に使う新型のリチウム・空気電池を開発したと発表した。電気自動車の長距離走行を可能にする自動車用の次世代電池とされるリチウム・空気電池の実用化に向けた第一歩といえよう。 電気自動車用の電源としてリチウムイオン電池がある。しかし、現在のリチウムイオン電池は、電気容量が小さく、長距離走行できない。そこで、次世代の電気自動車用電池として浮上してきているのが理論上、リチウムイオン電池より電気容量が大きく、エネルギー密度も高いリチウム・空気電池だが、まだ実用化されていない。 産総研は、炭素原子でできたシートのグラフェンが空気中の酸素を還元する触媒効果を持つことを発見、その知見を基に新型のリチウム・空気電池を開発した。 この新型リチウム・空気電池は、正極となるグラフェン空気極、負極となる金属リチウム、両者の間に入るハイブリッド電解液(有機電解液/固体電解質/水溶性電解液)で構成される(図参照)。放電時には、負極で金属リチウムが溶け出し、リチウムイオンと電子を生成、その電子が正極の空気極であるグラフェンに向かって移動して電気が発生する仕組み。 新しいグラフェン空気極の性能確認のため、グラフェン以外の炭素材料を空気極に使ったリチウム・空気電池を作って比較したところ、従来型燃料電池用の白金を20%含むカーボンブラック空気極に近い活性があることが分かった。 また、50回充放電を繰り返しても電位は殆ど劣化せず、安定した特性を示すことが確認されたという。 詳しくはこちら |  |
新リチウム・空気電池の構造図(提供:産業技術総合研究所) |
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