欧州の世界最大の大型加速器で世界最高の輝度を達成
:高エネルギー加速器研究機構

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)は4月26日、欧州原子核研究機構(CERN、本部スイス・ジュネーブ)が2008年に運転を開始した世界最大の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で世界最高の輝度を達成したと発表した。
 同加速器は、陽子を光の速度近くまで加速して互いに正面衝突させるもので、輝度はその際にどれだけ効率よく陽子同士を衝突させられるかの指標。米国フェルミ国立加速器研究所のテバトロン加速器による2010年の記録を更新したという。LHCは、陽子同士を衝突させることによって宇宙誕生直後の状態を再現することを狙っているが、これまでにない輝度を達成できたことで今年末までの運転期間中に新粒子発見などに必要なデータが効率よく集められると期待している。
 LHCは、高エネ研など世界の約3,000人の物理学者が協力してジュネーブ郊外のフランスとの国境をまたぐ地下100mに建設した一周約27kmの巨大な円形型加速器。この円周上で陽子を走らせ、衝突の際に起きる様々な素粒子反応を観測する。粒子測定器は4台設置されているが、日本からはこの内の1台を使った実験グループに高エネ研や大学から約100人が参加している。
 加速器は、輝度と並んで粒子の加速エネルギーの大きさがその性能を表す最も重要な指標となるが、LHCは現在3.5テラ電子ボルト(テラは1兆、電子ボルトは1ボルトの電圧で加速した時に電子が得るエネルギーの大きさ)で運転している。このエネルギーでは、陽子衝突によって宇宙誕生直後の状態が再現できると期待され、物質になぜ質量があるのかを説明するために理論的に存在が予想されている未知の「ヒッグス粒子」の発見につながると期待されている。

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