気候変動予測の数値実験結果を発表
:気象研究所/海洋研究開発機構/東京大学大気海洋研究所

 気象庁気象研究所、(独)海洋研究開発機構、東京大学大気海洋研究所は2月23日、2013~14年に作成予定の気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 第5次評価報告書に向けて実施した気候変動予測数値実験の成果を発表した。
 CO2(二酸化炭素)排出による地球の平均気温上昇を2℃以内に抑えるというシナリオの達成には、今世紀後半にCO2排出をゼロにする必要がある、などの結果が得られたという。
 気象研などの3機関は、文部科学省の気候変動予測革新プログラム(2007年度~11年度)に参画、海洋研究開発機構のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を駆使するなどして、300年先までの長期的な地球環境変化の予測、2030年ころまでの近未来気候変化の予測、極端な気象現象の予測などに取り組んでいる。その中で、IPCC第5次報告書向けのシミュレーション実験や解析研究などが一段落、このほどその成果をまとめた。
 地球環境予測では、数通りの主要なCO2濃度抑制シナリオをもとに、その濃度シナリオを実現させるには将来の化石燃料起源のCO2排出量をどのように制御しなければならないかを、新たに開発した地球システム統合モデル(新ESM)を用いて予測した。その結果、CO2濃度を産業革命前の約46%増に当たる410ppm(1ppmは100万分の1)に安定化するシナリオの達成には2040年代にCO2排出量をほぼゼロに、2100年のCO2濃度を550ppmに抑えるシナリオの達成には今世紀後半に排出量を現在の35%程度にする必要がある、などの結果を得た。

 近未来予測では、ある年月の観測データを初期値化して近未来を予測する新手法を導入し、予測精度の向上に成功した。ここ10年、全球的な温暖化傾向はやや減速しているように見えるが、新手法による予測だと、2015年以降に向けて減速傾向は解消に向かい、これからの10年は温暖化が本格化するという結果が得られたという。

 極端気象現象の予測では、格子間隔が従来の10分の1以下の、世界で最も空間解像度の高い全球20km格子大気モデルを用いて台風や大雨などの予測を実施、その結果、台風の活動最盛期である7月から10月の期間の台風存在頻度は減少、台風経路は東に偏り、東南アジア沿岸域への接近数は減少、最大風速で見た台風の強度は増加、などが分かったという。

詳しくはこちら