金属のクリープ試験期間の世界最長記録を更新
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は2月27日、高温状態で試験片(金属片)に荷重(外部からの力)をかけて変形量を測定する「クリープ試験」で、試験開始からの総試験日数が2月27日で1万4,853日間に達し、クリープ試験期間の世界記録を更新したと発表した。
 クリープ試験は、金属材料に一定の温度下で長期にわたり一定の加重を加え続け時間の経過に伴うクリープ(徐々に形が変わる現象)変形量や、破断するまでの時間を測定し、データを取る試験をいう。
 これまで世界で報告されている最長のクリープ試験記録は、ドイツのシーメンス社が持っていて、試験時間は35万6463時間(1万4,852日と15時間に相当)だった。
 同機構は、旧金属材料技術研究所時代の1967(昭和44)年6月19日から東京・目黒区にある施設で今回の試験を開始、途中電気炉の改造に伴う1回の中断を除き、事故などによる中断のない連続試験により、長時間クリープ変形データ取得の世界最長記録を更新した。
 現在、世界最長のクリープ試験データとして、英国の「ギネスブック」への登録を申請している。
 試験の対象となったのは、直径1cm、長さ5cmの炭素を含んだ鋼(ハガネ)で、400℃の高温下で約2.3tの力をかけて引っ張り続けた。
 これまでに取得したひずみと時間の関係を示すクリープ曲線を見ると、クリープ試験の開始時に、約1.2%のひずみが生じ、その後、試験時間の増加に伴い試験片のひずみが増大、世界記録更新となる1万4,853日間が経過する時点で約5.4%に達した。
 同機構では、クリープ試験により取得した高温用金属材料のクリープ強度データを、クリープデータシートとして発行しており、国際的にも高く評価されている。クリ―プ変形データは、発電プラントや化学プラントなど、高温・高圧の厳しい条件下で使用される機器構造物の設計における材料強度のデータや、長期間使用される高温機器部材など金属材料の寿命評価をする場合のデータなどとして活用される。今回取得したデータも、火力発電プラントなどの厳しい環境で使用される材料の安全性向上のために役立つものと期待されている。

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物質・材料研究機構のクリープ試験施設(提供:同機構)