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ペロブスカイト太陽電池の安定性を大幅に向上―劣化の原因を突き止め対策技術を開発:物質・材料研究機構

(2016年10月5日発表)

 (国)物質・材料研究機構は10月5日、光電変換効率はきわめて高いものの性能が劣化しやすかったペロブスカイト太陽電池の安定性を大幅に向上させることに成功したと発表した。この安定化技術を発展させれば変換効率が高く長時間劣化しない高性能な太陽電池の開発が期待できるという。

 ペロブスカイト太陽電池はペロブスカイトと名付けられた結晶構造の材料を発電層とする太陽電池。研究開発による性能の伸びが著しく、シリコン系に代わる次世代の太陽電池と目されているが、安定性に大きな課題を抱えている。研究グループはこの改善に取り組み、今回劣化の原因を解明、対策技術を開発した。

 現在最も変換効率が高いペロブスカイト太陽電池は正負の電極層間に酸化チタン、ペロブスカイト層、ホール輸送層をサンドイッチ状に挟んだ順セル構造のものだが、この電池は光の当たらない暗所に保管しても200時間に約3割変換効率が低下していた。

  今回の研究で、ホール輸送層に用いている添加剤がペロブスカイト層と化学反応を起こして劣化を引き起こしていることを突き止め、この化学反応を抑制する技術を開発した。その結果、暗所では1,000時間経ても性能は低下せず、また変換効率が85%まで劣化する時間が約6倍伸び、安定性の大幅な改善が図れたという。

 今後研究グループは、安定性が高く高効率で低コストのペロブスカイト太陽電池を、民間企業との共同研究を通して開発したいとしている。