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臭いや黄変の元となる成分を含まないダイコンを開発―“たくあん臭”のしない「たくあん漬け」が作れる:農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2020年7月20日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は720日、臭いや黄変の元となる成分を含まないダイコンの新種を渡辺農事(株)と共同で開発したと発表した。“たくあん臭”のしない、弁当などにも入れられる「フレッシュ感のあるたくあん漬けが作れる」といっており、「令白(れいはく)」と名付けた。渡辺農事が7月下旬から種子を試験配布する。

 野菜の国内生産量は農林水産省の食料需給表によると2015年時点で年間1,186t。中でも消費量の多いのがダイコン。2015年まで長い間野菜のトップだった。

 農研機構は、そのダイコンの代表的加工品であるたくあん漬けからあの特有の臭気(たくあん臭)が出ないようにするダイコンを実現しようと研究に取り組み、既にそれを実現して「悠白(ゆうはく)」の名で品種登録している。

 しかし、その新種は商品として重要な姿形がやや不揃いなほか、漬物原料用ダイコンに求められている重さを1,500g以上にすることが難しい、などの難点があった。

 その改良を目指して開発したのが今回の「令白」。

 たくあん臭や黄変は、ダイコンに含まれている硫黄を含む化合物(含硫配糖体)の一種「グルコラファサチン」という物質によって生じることが分かっており、2017年に品種登録した「悠白」で実際にそれを確認している。

 今回の「令白」は、一世代に限り一定の収量が得られる、いわゆる「F1(雑種第一代)品種」で、DNAマーカー選抜技術と呼ばれる手法を使うことにより臭いの元凶グルコラファサチンが生合成されないようにした。

 植物の品種間にはそれぞれのDNAを構成している4種類の塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)の配列に少しずつの違いがある。そのDNAの塩基配列の違いを目印(マーカー)にして目指す目的の品種を効率的に選抜する手法のことをDNAマーカー選抜と呼び、近年品種改良の新技術として注目されているが、「令白」を通常の交配育種でかかる期間のおよそ半分の約6年間の研究で育成することに成功したといっている。

 「令白」の栽培に適しているのは関東地方より南の地域で、茨城県坂東市での栽培では重さ1,751gとこれまでの「悠白」より重い形の均一な内部にすが入らないだいこんを得ているという。