人気のブドウ「シャインマスカット」の全ゲノム配列を解読―ワイン用の欧州ブドウとは異なる構造を持つ:かずさDNA研究所/農業・食品産業技術総合研究機構
(2019年8月22日発表)
ブドウ「シャインマスカット」果房
(提供:農研機構)
公益財団法人かずさDNA研究所と(国)農業・食品産業技術総合研究機構の共同研究グループは8月22日、味の良いブドウとして知られる「シャインマスカット」の全ゲノム(全遺伝情報)配列を解読したと発表した。シャインマスカットの全ゲノム配列が解読されたのは初めて。
果物として生のまま食べるブドウを生食用ブドウといい、高温多湿の気候のもとでの栽培では果実が割れてしまう裂果と呼ばれる現象が生じる。それに対応しようと日本では、欧州ブドウのおいしさと耐病性があって裂果が少ない米国ブドウの特性とを兼ね備えた「生食用欧米雑種ブドウ」の開発を目標とする品種改良が長年にわたって進められてきた。
シャインマスカットは、農研機構が開発したその生食用欧米雑種ブドウの一つ。広く世界で栽培されているマスカットブドウのような香りを持った黄緑色の大粒の甘い実が実り、2006年に品種登録された。
味が良いほか、種なしで皮ごと食べられるなど消費者のニーズにマッチした特徴を持っていることから人気化し年々消費量が増えている。しかし、ワイン用欧州ブドウの全ゲノム配列の解読が進んでいるのに対し、生食用欧米雑種ブドウの方はそれがなされていなかった。
ゲノムは、DNA(デオキシリボ核酸)の全ての遺伝情報のこと。そのDNAを構成しているアデニン、グアニン、シトシン、チミンという4つの塩基がどのようにつながっているか長い配列を正確に読み解くことをシークエンシングという。今回研究グループは、超並列シークエンシング技術と大型コンピューターを駆使してシャインマスカットのゲノム解読を行い、全ゲノムの99.4%にあたる490.1Mb(メガビット、1Mbは100万ビット)の配列を解読することに成功した。
また、既に全ゲノムが解読されているワイン用欧州ブドウと配列を比較したところ生食用欧米雑種ブドウであるシャインマスカットは、それとは異なるゲノム構造を持っていることが分かった。
最近は、シャインマスカットの改良をさらに進めようとする交配が農研機構や公立試験研究機関、民間のブドウ育種家などで活発化し様々な新品種が発表され始めているが、ワイン用欧州ブドウとのゲノム構造の違いをさらに詳しく調べることで「シャインマスカットの生食用としての優れた形質にかかわる遺伝子を明らかにすることが期待される」と研究グループはいっている。