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ジャガイモ、サツマイモの品種開発を効率化―DNAマーカーを迅速に作製する方法を開発:農業・食品産業技術総合研究機構/石川県立大学

(2021年9月14日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構と石川県立大学は9月14日、共同でジャガイモとサツマイモの品種開発を効率化する方法を開発したと発表した。病気に強い、美味しいといった性質を選抜するための目印(マーカー)となる「DNAマーカー」と呼ぶDNA配列を迅速に作る方法を開発したもので、これまで1年以上かかっていた両作物のDNAマーカー作製を最短で2ヶ月にまで短縮することに成功したという。

 DNAマーカーとは品種間でのDNA配列の違いを検出する標識のこと。遺伝子マーカーとも呼び、それを目印として目的の遺伝子を持っているかどうかを判別し優良な品種を選抜する方法のことをDNAマーカー選抜という。

 人は父親と母親から1組ずつ2組の染色体を受け継ぐ。ところが、ジャガイモとサツマイモは高次倍数体作物といってそれぞれ4組と6組の染色体を持っている。そのため交配で作られる染色体の組み合わせが非常に多くなってしまう。

 さらに加えて、染色体は互いに良く似たDNA配列であるのでそれらのいずれかだけに存在する有用な遺伝子を見つけ出してわずかな配列の違いを識別できるようにするDNAマーカーの開発は大変難しい。

 既にイネやダイズなどにDNAマーカー選抜は使われているが、その方法は2組の染色体からなる二倍体作物向けに開発されたものであるため四倍体、六倍体のジャガイモ、サツマイモには使えない。

 こうしたことでジャガイモやサツマイモのDNAマーカー開発は遅れている。

 それに対し農研機構と石川県立大の共同研究グループは今回四倍体(ジャガイモ)、六倍体(サツマイモ)の両高次倍数体作物のDNAマーカーが迅速に作製できる方法を開発し高性能次世代シーケンサーを利用してゲノムの全領域の莫大な解析データが安価に得られるようにして壁を突破することに成功した。

 DNAは4種類の塩基物質(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)の繰り返しでできているが、その塩基の配列を自動で解読する装置のことをシーケンサーと呼び、生物のゲノムなど大量のDNA配列を一度に解読でききる装置を次世代シーケンサーと総称し、最近は1,000億塩基以上にも達する配列データが取得できるまでになっている。

 実験の結果、それぞれの特性を決定する遺伝子をとりこぼしなく詳細に検出できるジャガイモとサツマイモのDNAマーカーをそれぞれ3ヶ月、2ヶ月で作製できることが分かったという。

 今後様々な品種改良の場面に適用して有効性を検証しニーズにあった品種の迅速な開発に役立てていきたいと農研機構は言っている。