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コムギなどの高次倍数体を遺伝的に解析する手法を開発―主要作物の収量増など品種改良に期待:かずさDNA研究所/岡山大学/農業・食品産業技術総合研究機構

(2020年6月24日発表)

 (公財)かずさDNA研究所と岡山大学、(国)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センターは6月24日、少ないデータからでも遺伝解析ができる新たな手法を開発したと発表した。今後、コムギやサツマイモ、ラッカセイ、イチゴなど多くの高次倍数体作物の品種改良が可能になると期待されている。

 数千から数百万のDNA分子を高速、低コストで配列決定できる次世代シーケンサーが普及している。これによってゲノム(全遺伝子情報)解析技術が飛躍的に進展し、トマトやイネなどの育種に利用されるようになった。さらに植物体の大きさや果物の色、形などの形質についても統計遺伝学的解析で予測が可能になり、一部の品種の育種にも応用が始まっている。

 イネは両親からそれぞれ受け継いだ1対のゲノムを持つ二倍体で、一足早くゲノム情報を利用した育種が実現していた。ところがコムギやバレイショなどの栽培作物の多くは、ゲノムを2対もつ四倍体や3対もつ六倍体などの高次倍数体のため、ゲノム量が多く、解析は複雑になるため進んでいなかった。

 そこで研究チームは少ないデータからでも遺伝解析ができる方法(ngsAssocPoly(エヌジーエス・アッソク・ポリ)法)を開発した。これは次世代シーケンサーが検出する対立遺伝子の頻度から存在確率を産出し、その確率に基づいて遺伝解析をする方法をいう。

 生物が持つ形態や体質などの特徴が形質であり、その中で親から子に伝わるものが遺伝形質である。人間でいえば血液型(A、B、O)や指紋、つむじ(右巻き、左巻き)など互いに対立する形質に対応する遺伝子を対立遺伝子という。

 これまでの高次倍数体の解析では、対立遺伝子の数を正確に決めようとするため難しかったが、今回は次世代シーケンサーが検出する対立遺伝子の頻度から存在確率を算出し、その確率に基づいて遺伝解析を行った。

 対立遺伝子の数が正確に決まらなくとも、高い精度で遺伝解析ができるようになった。この方法で六倍体のサツマイモで遺伝解析を実施したところ有用性を確認できた。多くの高次倍数体にも適用可能で、様々な主要作物の品種改良に応用が期待される。