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寒冷地での栽培に適した黒大豆の新品種「黒丸くん」―東北地域など向けに開発、大粒で煮豆に向いていて多収:農業・食品産業技術総合研究機構

(2016年11月21日 発表)

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「黒丸くん」の子実 (2015年、育成地: 大仙市)
©農研機構 東北農業研究センター

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は11月21日、東北地方などの寒冷地向けの大粒で収量が多く煮豆に適した黒大豆の新品種を開発したと発表した。名称は、「黒丸くん」。東北地域での栽培に向いた大粒の煮豆用黒大豆の開発はこれが初めてで、普及が期待される。東日本大震災で被災した岩手県沿岸地域が導入に向け検討を進めている。

 江戸の昔から正月のおせち料理に欠かせないのが黒大豆の煮物。黒豆、ぶどう豆ともいい、外側を覆う皮(種皮)にアントシアニン系の黒い色素が含まれることからその名の通り黒い。

 実るにつれてだんだんと黒く色づき、中生種では10月から11月上旬、晩生種は11月中旬から12月上旬にかけて収穫され、栄養成分的には通常の大豆と同等で、三大栄養素のタンパク質、脂質、炭水化物のほかビタミン類やミネラル分などを含んでいる。

 栽培の歴史が古いだけに日本の各地にそれぞれの地に適した品種があり、東北地域にも通称「雁喰豆(がんくいまめ)」といわれる煮豆用の扁平な「黒平豆」や、主に納豆に用いられる小粒の「黒千石」などの在来種がある。中でも「黒千石」には、他の黒大豆よりイソフラボンやポリフェノールが多く含まれていることを日本食品分析センターが明らかにしている。

 しかし、東北地域での栽培に適した大粒の煮豆用黒大豆はこれまでなかった。

 農研機構は、この課題を解決しようとダイズモザイク病抵抗性品種の「ギンレイ」に大粒の「刈系529号」を交配して新品種「黒丸くん」を開発した。

 「黒丸くん」は、大粒で煮豆に加工したときの光沢や色が良く、収量が関東以南の標準的な黒大豆品種「玉大黒」より多収なほか、栽培中倒れ難いことからコンバインを使っての収穫が容易で機械化栽培に適している、という特徴を持っている。

 ただ、収量や品質の低下をもたらすダイズモザイク病や根に寄生するダイズシストセンチュウに対して十分な抵抗性を持っていないことから、これらの病害虫が蔓延し易い地域での栽培は避ける必要があると同機構はいっている。