分子が均等に並んだレンガ塀構造の有機半導体を開発―n型の有機半導体で高い電荷移動度を実現:東京大学/筑波大学ほか
(2021年11月11日発表)
東京大学、筑波大学、北里大学、(国)産業技術総合研究所の研究グループは11月11日、n型有機半導体BQQDIの分子を均等に並んだレンガ塀のように整列させ、電荷輸送の妨害に強い高性能なn型有機半導体を得ることに成功したと発表した。有機エレクトロニクス研究の進展が期待されるという。
有機半導体は塗布法で成膜でき、軽量で柔軟などの特徴を持つことから、次世代のプリンテッド・フレキシブルエレクトロニクス分野の開拓が期待されている。
しかし、有機半導体は一般に電荷移動度が低く、その解決が課題の一つとされている。近年、正孔(せいこう)を電荷のキャリアとするp型有機半導体で移動度の高いものが開発されているが、電子を電荷のキャリアとするn型有機半導体では開発が遅れている。
研究グループは先に、分子間相互作用によりレンガ塀型の結晶構造を持つn型有機半導体BQQDIを開発した。ただ、これは構成分子固有の長軸方向のズレによってレンガ塀構造は不均一で、期待の性能は得られていなかった。
レンガ塀を均等に積み上げて分子軌道の重なりを均等にすれば移動度は向上すると考えられるため、研究グループは今回かさ高いシクロヘキシル基を新手法で導入、シクロヘキシル置換基を持つBQQDI(Cy6-BQQDI)を開発した。
これによりレンガの配置が整う効果が現れ、高い電子輸送能力を発現させられることが明らかになった。
この成果をもとに今後かさ高い環状アルキル基の適切な修飾を探索すれば、均等なレンガ塀構造を持ち、かつ塗布法に適したn型有機半導体を実現できると考えられるという。