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細胞分裂期における核小体の働きを解明―染色体の均等な分配を保証するたんぱく質複合体を発見:筑波大学ほか

(2020年6月24日発表)

 筑波大学と(公財)がん研究会の共同研究グループは6月24日、細胞分裂期の染色体の均等な分配を保証する核小体たんぱく質複合体を発見したと発表した。細胞分裂における核小体の働きを分子レベルで明らかにしたもので、核小体を介したがんの進展メカニズムの理解にもつながる成果という。

 核小体は真核生物の細胞核内に存在する膜を持たない構造体で、たんぱく質合成工場であるリボソームの構築の場になるとともに、細胞周期の制御やストレス応答など多様な細胞機能に関与していることが知られている。

 特に、細胞分裂期において核小体は解体され、核小体を構成していたたんぱく質やRNAの一部が、PRと呼ばれる染色体の表面領域に濃縮されることから、核小体と細胞分裂の関連性が注目されてきた。しかし、その実態やメカニズムは解明されていなかった。

 研究グループは核小体の挙動から、核小体たんぱく質が細胞分裂期を制御するとの仮説をたてて研究を進め、今回、3つの核小体たんぱく質から成る新規な核小体たんぱく質複合体を見出し、この複合体が細胞分裂期における均等な染色体の分配を担保することを突き止めた。

 この複合体は、NOL11、WDR43、Cirhinという3つのたんぱく質の集まりで、分裂間期には核小体に、分裂期には染色体のPRに局在し、姉妹染色体分体間の接着や、分裂中期における染色体の細胞赤道面での整列に重要な役割を担っていることが明らかになった。

 姉妹染色体分体間の接着や染色体の細胞赤道面での整列は、細胞分裂における娘細胞への均等な分配に必須で、これらの過程に破綻が生じると、つまり、分裂期での染色体の分配機構に破綻が生じると、がんの悪性化で観察される「染色体不安定性」を増大させることから、今回の研究成果は、核小体を介したがんの進展メカニズムの理解につながるとしている。