プラスチック海洋ゴミで新たな発見―直径僅か3.5cmのキャップ内に多様な生物が棲息:名古屋大学/産業技術総合研究所ほか
(2026年7月10日発表)
名古屋大学、(国)産業技術総合研究所(産総研)などの共同研究グループは7月10日、黒潮に乗って日本の海域に漂着した海洋ゴミのプラスチック製ボトルキャップ内に多様な生物が棲息する小さな海洋生態系が作られているのを発見した、と発表した。
見つかったのは、高知県南東沖の太平洋。直径が僅か3.5cmという小さなキャップ内にゴカイ類、有孔虫、コケムシ、フジツボ、扁形動物(へんけいどうぶつ)など9分類群・307個体もの生物が共存する小さな海洋生態系が形成され、海に投棄されてから長期にわたり漂流して日本の海域にたどり着いたものと研究陣は見ている。
共同研究には、国立科学博物館、海洋研究開発機構、京都大学、福井県立大学が参加した。
この成果は、オランダに本拠を置く国際的出版社「エルゼビア」が発行する国際雑誌「Marine Pollution Bulletin」に7月7日掲載された。
世界のプラスチック生産は、2000年から急増、OECD(経済協力開発機構)の推計では2019年の時点で年間約4億tに達し、その多くが使い捨ての包装容器類に使われ、多くが海に流れ込んで海洋生物を傷つけたり、死に追いやっている。
このため、プラスチックによる世界の海洋汚染は、国連環境総会などで繰り返し取り上げられ世界的課題になっているが、今回のプラスチック製ボトルキャップのような小さな海洋ゴミが海洋生態系にどのような影響を及ぼしているのかはよく分っていないのが実情といわれる。
今回発見したキャップは、海洋研究開発機構の海底広域研究船「かいめい」による調査航海で高知沖を航行した際に得たもので、キャップの表面に干潟などに生息するゴカイが三次元的な構造の巣を作っていて、その巣の内部を棲みかにして小さな様々な生物が棲息し小さな海洋生態系ができているのを見つけた。
回収したキャップの外側にフィリピンの飲料企業のラベルが残っていたことから、投棄されたのはフィリピン周辺の海と見られ、キャップがいわば“いかだ”の働きをして黒潮の流れに乗って約70日間にわたり漂流して日本の沖に着いたと推定している。巣の中の生態系の生物は、生きたまま採集することができたという。
この結果から小さなプラスチック片が数カ月規模で生物群を維持しながら海洋を移動していることが分かったといっている。
研究グループは「生活の中で気軽に捨てられてしまいやすい小さな海洋ゴミは、海洋生態系の保全を考える上で無視できない存在であることを示している」と話している。




