世界最小の恐竜の卵の化石を発見―兵庫県丹波市の1億1千万年前の地層から:筑波大学ほか
(2020年6月23日発表)
卵層準から見つかった獣脚類恐竜卵殻化石。ヒメウーリサス・ムラカミイ(新卵属・新卵種)(標本実物写真、μCT画像、復元された卵の模式図)(提供:筑波大学・兵庫県立人と自然の博物館)
筑波大学と、兵庫県立人と自然の博物館は6月23日、共同で世界最小の恐竜の卵の化石を発見したと発表した。兵庫県丹波市(たんばし)の約1億1千万年前の地層から見つけた。小型の恐竜は化石として残りにくいため不明な点が多いだけに今回の発見により新たなことが分かるのではないかと期待されている。
丹波市は兵庫県の東部に位置し、前期白亜紀(約1億1千万年前)と呼ばれる地層が露出していて、これまでに国内最大級の恐竜として知られる「丹波竜」の化石など多様な恐竜類の化石が見つかっている。
今回の化石は、筑波大生命環境系の田中康平助教と兵庫県立人と自然の博物館、カナダのカルガリー大学、王立ティレル古生物博物館などの日加国際研究チームが2019年1月から3月にかけて丹波市の山南町上滝地区で行った新たな大規模発掘調査で掘り出した卵殻(らんかく)の中から見つけた。
卵殻は卵の内部を保護している外側の硬い穀(から)のこと。大規模発掘調査はこれまでに卵殻化石や骨格化石が見つかっていた位置より6~7mほど上に位置する地層(篠山層群)を対象にして行われた。
その結果、炭酸カルシウム質の卵殻化石約1,300点が確認され、その中に獣脚類と呼ばれる二足歩行の恐竜の卵殻が4種類含まれていることが分かった。
そこで更にその4種類について標本調査や微細構造調査を進めたところ、その内の一つが世界最小の非鳥類型恐竜であることを発見、「ヒメウーリサス・ムラカミイ」と命名した。ヒメは「小さい、可愛らしい」という日本語から、ウーリサスはギリシャ語の「卵の石」、ムラカミイは丹波竜の化石の第一発見者として知られる村上茂氏の姓からそれぞれ採った。
発見した卵化石の大きさは、4.5cm×2cmとウズラの卵ほどで、重さは推定で約10gという。
丹波市の地層からはこれで6種類の恐竜化石が見つかったことになり、「世界で最も卵殻化石の種類が豊富な地域になった」と研究グループは話している。