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次世代生み出す仕組み解明―二遺伝子が生殖細胞づくりを優先:筑波大学

(2019年5月17日発表)

 筑波大学は5月17日、ショウジョウバエによる実験で次世代の生命を生み出すのに欠かせない仕組みの一端を解明したと発表した。生殖細胞から次世代の個体が生まれる過程で精子や卵子などの生殖細胞が優先的に作られるよう、二つの遺伝子が体を構成する体細胞を作る働きを一時的に抑えることを突き止めた。動物の生殖細胞が作られる共通原理解明の第一歩になると期待している。

 筑波大学 生存ダイナミクス研究センターの浅岡美穂研究員と小林悟教授が、熊本大学の羽生-中村賀津子研究員、中村輝教授と共同で明らかにした。

 突き止めたのは、nanospgcと呼ばれる二つの遺伝子。生殖細胞から次世代の個体ができる過程で再び生殖細胞が作られる際に、これらの遺伝子が体細胞を作る遺伝子の働きを一時的に抑えていることが分かった。

 体細胞を作る遺伝子は、転写因子と呼ばれるたんぱく質が細胞内の核に移送されて初めて働くが、nanos遺伝子はその移送に必要なたんぱく質「Importin-α2」の合成を妨げていた。ただ、このnanos遺伝子の機能を失わせても、それだけでは体細胞を作る遺伝子は働き始めず、もう一つのpgc遺伝子の働きを同時に止めたときに、初めて体細胞を作る遺伝子が働き始めることが分かった。

 この結果から、研究チームは「生殖細胞の形成過程では、これらの遺伝子によって体細胞性遺伝子が働かないよう二重のロックがかけられている」としている。今後、他の動物についてもnanos遺伝子の働きを明らかにすることで、生殖細胞形成の共通原理があぶりだせると期待している。