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100種超す昆虫の「系統樹」国際協力で作成―世界10カ国の研究者グループが参加して構築:筑波大学ほか

(2019年1月11日発表)

 筑波大学と横須賀市自然・人文博物館は111日、100種を越す昆虫の類縁関係を表した「系統樹」を国際協力によって作ったと発表した。有翅昆虫(ゆうしこんちゅう)と呼ばれる106種の昆虫の系統樹を世界10カ国の25人の研究者が協力して構築した。昆虫の進化の研究をはじめ、環境保全、農業、医学などさまざまな分野の研究に役立つことが期待される。

 系統樹とは、生物の進化の道筋を描いた図のこと。幹や枝を持つ樹木のような形になることから付いた名称で、これを見れば生物同士の類縁関係、系統関係を一目で知ることができる。このため、生物学の分野では、系統樹が非常に重要視されている。

 生物の遺伝子を解析して進化の系統を調べる研究は、急速に進んでいるが、生物種の半分以上を占めるとされている昆虫の系統進化の研究は脊椎動物より大幅に遅れている。

 こうしたことから、筑波大は2012年から昆虫類の進化の道筋を探る「1,000種昆虫トランスクリプトーム進化プロジェクト」と呼ぶ国際プロジェクトに取り組んでいる。トランスクリプトームとは、細胞内のすべてのRNA(リボ核酸)のことで、その国際プロジェクトは日本の研究者10人を含む13の国・地域の101人の研究者グループが1,000種類の昆虫類のトランスクリプトームを解析し比較して昆虫類全体の系統進化を明らかにすることを目指している。

 今回の100種を越す有翅昆虫の系統樹作成は、その国際プロジェクトの一環として筑波大 生命環境系の町田龍一郎教授らの研究グループが10カ国、21研究機関の研究者と共同で取り組んだ。

 “空を飛んだ最初の動物は昆虫”だといわれているが、昆虫の羽のことを生物学では「羽」ではなく「翅(はね)」と書き、昆虫類の99%をその翅を持った有翅昆虫が占めている。

 今回の系統樹は、106種の有翅昆虫の約3,000に及ぶ遺伝子のトランスクリプトームを解析することによって得たもので、「信頼度の高い系統樹を構築した」と筑波大は自信を見せている。