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ロボット制御に新通信技術―電波が直接届かなくても安定的に:情報通信研究機構/産業技術総合研究所

(2016年7月25日発表)

(国)情報通信研究機構及び(国)産業技術総合研究所は7月25日、電波が直接届かない場所にいるロボットでも中継用ドローンなどを用いて安定的に制御する技術を開発したと発表した。一時的に通信が途切れてしまう既存技術の問題点を、ロボット制御に特化した通信手法を開発することで解決した。建物内や大規模災害時におけるロボットの活用、山間部でのドローンによる配送事業などさまざまな応用が期待できるという。

ロボットの制御信号を複数の中継用ロボットを介して送り届ける技術はあったが、従来はインターネット用に開発された無線LAN技術をそのまま流用していた。無線LANでは周囲の環境変化に応じて最適な通信経路を選ぶため、その切り替わりの際に通信が一時的に途切れロボットが制御不能になる危険性があった。

そこでこの技術を根本から見直し、中継伝送を前提に応答の遅れ時間が短く通信信号同士が互いに干渉し合わない新しい技術を開発した。具体的には、制御局―中継局間、中継局―ロボット局間などの各通信経路に対して信号のやり取りのタイミングをあらかじめ割り振る「時分割多元接続」と呼ぶ通信方式を採用した。

その結果、数十ミリ秒から数百ミリ秒の間で不安定に変動していた中継局経由の応答の遅れ時間が50ミリ秒以内に抑えられた。それによってロボット制御の不安定化を回避できたほか、通信経路がロボットの移動によって切り替えられたときに発生する通信の一時的な途切れをなくすことができた。

試作装置を用いた実験では、操縦者から見えない場所にある小型四輪ロボットを、高度20~30mの上空を飛ぶドローン中継局を介して安定的に遠隔操縦できることを確認した。ドローン経由で他のロボットを制御するとともに、途中で通信経路が切り変わっても通信を途切れさせずに制御できた例は世界でも初めてという。

今回の成果について「複数のロボットやドローンが自律的に協調し合いながら、高い信頼性を持って無線ネットワークでつながるシステムの実現の基盤になる」と期待している。