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粘土鉱物のセシウム吸着場所を特定―放射能汚染土壌処理に貢献も:物質・材料研究機構

(2016年11月10日発表)

 (国)物質・材料研究機構は11月10日、放射性セシウムが土壌中に強く固定される仕組みの一端を明らかにしたと発表した。土壌に含まれる粘土鉱物にセシウムを強く吸着する場所が少なくとも2カ所あることを突き止めた。今後、福島原発事故によって大量に発生した汚染土壌の処理などに役立つと期待している。

 汚染土壌の中で極微量の放射性セシウムを強く固定しているのは、雲母やバーミキュライトなどの粘土鉱物。これらは層状の構造を持っており、セシウムは主にその層間空間の「雲母ゾーン」と端部が風化してすき間が入り込んでできた空間「くさびゾーン」に吸着すると考えられているが、必ずしもその仕組みは明らかではなかった。

 そこで同機構は今回、雲母とバーミキュライトの両方の性質を持つアルミニウム置換粘土を用いてセシウムの吸着・離脱状態をNMR(核磁気共鳴)装置を使って解析した。その結果、セシウムはイオンとなって雲母ゾーンとくさびゾーンの両方に吸着、さらにこれら両方を行き来している可能性があることなどがわかった。

 バーミキュライトの雲母ゾーンへのセシウムの吸着はこれまでも電子顕微鏡やエックス線を用いた研究で観測されていたが、アルミニウム置換粘土のくさびゾーンへの吸着を観測できたのは今回が初めてという。同機構は、今回の成果について「放射性セシウムの吸着能力や吸着制御の向上に大いに貢献し、汚染土壌の減容化にもつながる」と話している。