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リグニンのない木質の形成に成功―木質バイオマス由来の燃料や化成品の高効率生産に道:産業技術総合研究所

(2018年9月28日発表)

 (国)産業技術総合研究所は928日、メルボルン大学、ブリティッシュコロンビア大学などと共同で、バイオマス資源である木の活用を阻害しているリグニンがほとんどない細胞壁を作ることに成功したと発表した。細胞壁にリグニンがない植物を作ることにより、木質バイオマスを原材料に燃料や化成品などを高効率生産することが期待されるという。

 植物の細胞壁は、すべての細胞が持つ一次細胞壁と、道管や繊維細胞のような強度を必要とする細胞にのみ蓄積する二次細胞壁に大別できる。二次細胞壁は木質とも呼ばれ、木そのものを指しており、一次細胞壁の内側に形成される。

 リグニンは二次細胞壁を構成している主要な物質の一つで、巨大なポリマーから成り、木質バイオマスからセルロースやその分解物であるグルコースを取り出す際に阻害要因になっている。

 研究グループは今回、リグニンを含まない一次細胞壁の形成を制御している遺伝子を発見、この遺伝子を使い、木質である二次細胞壁の代わりにリグニンがなく、極めて酵素糖化性の高い細胞壁を高蓄積させることに成功した。

 発見した遺伝子はERF転写因子遺伝子群と呼ばれる遺伝子ファミリーで、これをぺんぺん草の仲間であるシロイヌナズナの変異体に導入したところ、繊維細胞にリグニンを持たない、一次細胞壁に似た細胞壁が蓄積した。

 蓄積した細胞壁の酵素糖化性を解析したところ、野生株と同等の細胞壁量を持ちながら2倍程度酵素糖化し易い事が分かったという。

 今回の成果を活用して植物の一次細胞壁の割合を高めたり、二次細胞壁に一次細胞壁の特徴をブレンドしたりできれば、将来的に木質バイオマス由来の燃料や化成品の高効率生産に寄与すると期待されるという。今後、天然の木質に近い性質を持ちながら産業利用に適した木質を生産できるよう改良技術の開発を進めたいとしている。