接着剤で接合した構造材の耐久性評価手法を開発―自動車や航空機などの輸送機器の軽量化に一役:産業技術総合研究所
(2021年9月28日発表)
(国)産業技術総合研究所は9月28日、構造材を接着剤で接合した部位の耐久性を評価する手法を開発したと発表した。接合部の破壊の起点となる強度低下部位を特定したり、破壊要因を究明したりすることが可能になるため、自動車や航空機などの構造材の接着接合に道を開くことが期待されるという。
自動車などの輸送機器を軽量化する手立ての一つとして、構造材料の接合に接着剤を用いる方法が考えられている。ただ、現状では接合部の経時的な強度低下を予測する技術が確立しておらず、接合部の長期信頼性確保策の確立が課題とされている。
産総研が今回開発したのは、接着後、水や熱の影響によって劣化する接合部の接着強度低下を推定する手法。
構造材の接合に主に用いられる接着剤は、化学反応により3次元的な高分子構造を形成し、それが硬化して材料同士を強固に接着するタイプのもの。この高分子硬化物は水や熱により劣化し、長期的に接着強度が低下していくが、この変化は接着面内で一様に進行するとは限らず、また接合部の破壊は強度が低い部位から始まる。
研究グループは接着剤硬化物の分子構造と接着強度との間に相関があると考え、分子構造を赤外線の吸収スペクトルで分光学的に解析し、その解析結果から、接合部の強度低下部位を特定し、強度低下を推定することに成功した。
赤外線吸収スペクトルは物質の分子構造によって固有のパターンを示すことから経時劣化に伴う接着剤の分子構造の変化を明らかにすることができる。そこで、引張り試験で評価した強度を関連付け、接着強度推定手法を開発した。
赤外線吸収スペクトルの測定をもとに強度を推定した結果と,引張り試験により実測した値とがよく一致しており、開発した手法の信頼性が確認されたという。構造部材の接着接合の長期耐久性の確認や性能向上などへの貢献が期待されるとしている。