染色体の構造変換を司るたんぱく質の立体構造を解明―遺伝子の転写、修復などに関わる疾患の研究促進へ:東北大学/高エネルギー加速器研究機構(KEK)
(2018年8月6日発表)
東北大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)、米ペンシルベニア大学、仏キュリー研究所の国際共同研究グループは8月6日、染色体の構造変換を司るたんぱく質「ヒストンシャペロンHIRA」の立体構造をX線結晶構造解析によって初めて解明したと発表した。
遺伝情報の発現と伝達を担っている染色体は、ヒストンと呼ばれるたんぱく質にDNAが巻き付いた「ヌクレオソーム」の集合から成る。このヌクレオソーム構造により遺伝物質のDNAが細胞核内にコンパクトに収納されているが、遺伝情報を複製、転写、修復する際には、ヌクレオソームの立体構造を大きく変える構造変換が必要で、この構造変換に携わっているたんぱく質の一つがヒストンシャペロン。
研究グループは今回、ヒストンシャペロンの一つであるヒストンシャペロンHIRAを詳細に調べた。HIRAは極めて取り扱いにくいたんぱく質で、生化学的な解析が難しく、ヒストンをヌクレオソームに取り組む仕組みは分子生物学上の未解決問題とされていた。
研究グループは放射光施設で得られるX線を用いてHIRAの結晶構造を解析し、HIRAの立体構造を原子分解能レベルで解明した。また、ヒト細胞株を用いた実験により、HIRAの三量体形成がヒストンやHIRAのパートナーたんぱく質CABIN1との相互作用に必須であることを証明した。
これら一連の発見から、HIRAは転写と修復に関わるたんぱく質群のプラットフォームとして機能していることが強く予想されたという。
今回の成果は、がんなどの疾患の発症機構の解明や治療法の開発につながることが期待されるという。