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白金に代わる炭素系触媒、微量の窒素で効果―燃料電池の正極の酸素還元反応を活性化:物質・材料研究機構ほか

(2018年8月6日発表)

 (国)物質・材料研究機構と北海道大学、ドイツ・ウルム大学の国際共同研究グループは86日、燃料電池の効率のカギを握っている正極における酸素還元反応の触媒として、炭素に微量の窒素を導入した炭素系電極触媒が有効なことを見出し、この触媒による酸素還元反応の活性化の仕組みを明らかにしたと発表した。高価な白金族に代わる低廉(ていれん)な炭素系電極触媒の開発研究の進展が期待されるという。

 燃料電池の正極に用いられる酸素還元反応は酸素を水に変換する反応で、その活性化は非常に難しく、これまで白金だけがこの反応の活性化と高効率化に有効と考えられていた。

 しかし、近年炭素に窒素を導入した材料でも活性化が可能なことが見出され、世界中で炭素系電極触媒の研究が進められている。ただ、炭素と窒素によってなぜ酸素還元反応が活性化するのか、その仕組みの詳細などは分かっていなかった。

 研究グループは今回、異なる窒素の含有量と化学構造の組み合わせを持つ複数のモデル触媒をつくり、反応全体の効率を決めている過程と酸素吸着の仕方を調べた。また、触媒表面の形態や窒素分布を詳細に観察し、理論モデルを設計して、炭素触媒を用いた酸素還元反応の電極過程を解析した。

 その結果、微量な窒素導入のみで、炭素が酸化還元反応を活性化させることができることを見出し、そのメカニズムを実験と理論により説明することに成功した。

 これらの知見をもとに、今後はより高い特性を持つ炭素系触媒を探索し、高効率化につなげたいとしている。