機能性新材料開発に新たな道―熱で収縮する新材料も:東北大学/東京工業大学/高輝度光化学研究センター/高エネルギー加速器研究機構
(2020年8月25日発表)
東北大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)などの研究グループは8月25日、熱を加えると膨張せず収縮するなど特異な性質を示す新材料を発見したと発表した。2種類の物質を固体のまま溶け合わせた固溶体で、その仕組みも解明した。力を電圧に変換する新しい圧電体材料や電子機器に必要な強誘電体など、新しい機能性材料の開発につながるとみている。
東北大学 多元物質科学研究所の山本孟助教、木村宏之教授、大学院生の戸田薫さんらの研究グループが、東京工業大学、高エネルギー加速器研究機構などと共同で明らかにした。
新材料は、代表的な強誘電体物質として知られるチタン酸鉛と同様の結晶構造を持つバナジン酸鉛とコバルト酸ビスマスを均一に溶け合わせた固溶体。地球深部と同様の高温高圧条件を再現する高圧合成法を用い、初めて合成することに成功した。
新物質を詳しく調べたところ、2種類の物質が一対一に近い組成では、電圧をかけても電気分極が起きない常誘電相が出現することが分かった。さらに高エネ研の放射光実験施設で結晶構造を詳しく調べたところ、常誘電相の状態では体積の小さい立方晶ペロブスカイト型と呼ばれる結晶構造に変化し、強誘電体のときよりも体積が8.7%も減少することが確認できた。こうした結晶構造の変化は、バナジウムとコバルトのイオンの間で電子の授受が起き、電荷が移動することによって生じることも突き止めた。
研究グループは「固溶で起こる電子の授受という電気化学的な現象によって極性構造を制御できることが明らかになった」として、今後、強誘電体・圧電体材料や巨大負熱膨張材料開発の新しい手がかりとなると期待している。