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超ウラン元素同位体の質量を測定―未知の超重元素探索に手がかり:高エネルギー加速器研究機構ほか

(2018年3月29日発表)

 高エネルギー加速器研究機構と(国)理化学研究所、九州大学を中心とした国際共同研究グループは329日、ウランより重い超ウラン元素同位体6種の質量を直接測定することに成功したと発表した。理論的に存在が予想されながら自然界には存在しない未知の安定超重元素の探索実験に有力な手がかりを与える成果という。

 高エネ研、理研、九大など国内8大学・機関、米仏韓の3大学・機関が参加した国際共同研究グループが、原子番号99から101までの超ウラン元素(アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム)の同位体6核種を対象に測定した。

 これらの元素は原子核の寿命が短く、すぐに崩壊して他の元素に変わる。そのため質量を直接測定するのは難しかったが、研究グループは独自の方式で初めて測定に成功した。短寿命の原子核を効率よく集める独自開発の「高周波カーペット式冷凍ガスセル装置」と、原子核を数ミリ秒間飛ばして数個の原子核でも質量測定ができる質量分光器を組み合わせて質量の直接測定を可能にした。

 さらにこの実験で得た質量データをもとに、原子番号103のローレンシウムから同109のマイトネリウムの同位体まで7核種の質量を間接的に決めることにも成功した。これらの原子核は極めて不安定でα線を出してすぐに今回質量測定に成功した核種に変わる性質があるが、その関係を利用して間接的に質量を割り出した。

 原子核物理学では、既に存在が確認されている超ウラン元素などよりもさらに重い領域に安定した原子核の集団が存在する「安定の島」が理論的に予想されている。ただ、これまでは超重元素の存在確認は崩壊時に出るα線の観測に頼るしかなく、α崩壊の連鎖が既知の原子核につながっていない超重元素を確認する手段はなかった。

 今回の成果は未知の超重元素の質量をα線観測によらずに直接測定、そのデータをもとに別の超重元素の質量を割り出せることを示したものだ。そのため「長寿命でα線を発しないと予想される『安定の島』の未知超重原子核の探索実験に有効な手法になる」と研究グループは期待している。