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異種固体界面の現象解析に新手法―全固体電池の実現加速も:物質・材料研究機構

(2019年11月21日発表)

 (国)物質・材料研究機構は11月21日、2種類の固体材料が接触する界面で起きる電気的な現象を高精度に効率よく解析するシミュレーション手法を開発したと発表した。固体界面の電子とイオンの状態を理論的に計算・解析するもので、電気自動車や家庭向けの電力貯蔵用に期待される安全性の高い全固体電池を実現する有力な手段になると期待している。

 高性能蓄電池としては、既に有機電解液を用いたリチウムイオン電池が広く使われているが、電気自動車や家庭用の大型蓄電池として利用するには発火や燃焼の心配がない固体電解質を用いた全固体電池の実現が求められている。ただ、そのためには異なる種類の固体同士の界面で起きる現象を、ミクロレベルで理解することが欠かせないとされている。

 同機構は今回、極微の世界で成り立つ量子力学や統計力学などさまざまな理論に基づく計算手法を駆使して、異種の固体が接する界面で起きる電子とイオンの動きをコンピューターで高精度に再現・解析できるようにした。新手法を用いて硫化物系全固体電池の酸化物正極と硫化物電解質の界面で起きる現象を解析したところ、実験で得られる結果を総合的にうまく説明できることが実証できた。

 今回の成果は、固体材料の界面で起きる複雑な現象を量子論・統計論で解析できるようにする一般的な理論計算手法。そのため、同機構は「安全で高性能な次世代全固体電池をはじめとする、さまざまな次世代固体デバイスの開発を加速させる」と期待している。