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負ミュオンを用い固体内での水素の運動の検出に成功―高性能の水素貯蔵材料の開発に貢献:高エネルギー加速器研究機構ほか

(2018年8月24日発表)

 高エネルギー加速器研究機構と(国)日本原子力研究開発機構、(株)豊田中央研究所などの共同研究グループは824日、負電荷を持つミュオン素粒子(負ミュオン)を用いて、水素が物質内に作る微小磁場とそのゆらぎの観測に世界で初めて成功したと発表した。

 固体内での水素の運動を正確に検出できるため、高性能な水素貯蔵材料などの開発への貢献が期待できるという。

 リチウムイオン電池などの反応のカギを握っている固体内でのリチウムイオンの挙動把握では、これまで正電荷を持つミュオン素粒子(正ミュオン)を用いて、固体内の微小な磁場変動を観測する「正ミュオンスピン回転緩和」測定という方法が用いられている。

 燃料電池の性能のカギを握る水素貯蔵材料の開発研究では、固体内における水素の挙動を正確に知る必要があるが、正ミュオンは物質中で水素イオンのように振る舞い、物質中で動いてしまう。このため、水素貯蔵材料の「正ミュオンスピン回転緩和」測定では観測にあいまいさが伴うという難点があり、新たな観測手法が求められていた。

 今回研究グループは、負ミュオンが物質中では水素以外の原子核に捕獲されて動かないことに着目し、「負ミュオンスピン回転緩和」測定を試みた。

 高エネ研と原子力研究開発機構が共同運営している大強度陽子加速器施設「J-PARC」で作り出された大強度負ミュオンビームを用い、これと高感度の高集積陽電子検出器システムとを組み合わせて、「負ミュオンスピン回転緩和」を測定した。その結果、水素化合物中の水素の作る微小な磁場とそのゆらぎの観測に成功した。

 多くのエネルギー関連材料や生体材料中では、水素をはじめとする軽元素の運動が重要な役割を担っている。今回の成果は、これを正確に検出する新たな手法を得たことを意味する、としている。