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リチウム内包フラーレンの電子状態解明―次世代有機半導体への実用化に道:筑波大学ほか

(2018年3月16日発表)

 筑波大学、(国)量子科学技術研究開発機構などの研究グループは316日、サッカーボール状の炭素分子内部にリチウム原子を取り込んだ新材料「リチウム内包フラーレン」の電子状態を解析することに成功したと発表した。太陽電池などへの応用が期待される次世代有機半導体の新材料として実用化に道をひらいた。

 研究グループには、筑波大、量子科技機構のほか東北大学とイデア・インターナショナル(株)が参加した。

 フラーレンは炭素原子が60個結合したサッカーボール状の炭素分子。内部に異種原子や分子を入れることで、特有の性質を発揮する分子にすることができる新材料として注目されている。特にリチウムなどの金属が入ると性質が大きく変わり次世代有機半導体材料として注目されているが、従来はその実用化に欠かせない電子状態が明らかになっていなかった。

 研究グループは今回、リチウム内包フラーレンを真空中で金属表面に吸着し、走査トンネル型と呼ばれる特殊な電子顕微鏡を用いて金属表面に吸着したリチウム内包フラーレン分子を直接観察した。さらに、この結果を理論計算による電子状態の結果と比較して詳しく解析した。

 その結果、中にあるリチウムが正電荷を持ったイオンとして存在していることを突き止めた。さらに、電子素子に利用する際の重要な指標である電子受容性や、外部から電圧をかけることで電荷を制御できることなど、リチウム内包フラーレンの電子状態を初めて詳しく解明することに成功した。

 今回の成果について、研究グループは「リチウム内包フラーレンを利用した高機能な有機エレクトロニクス素子実現の基礎になる」として、新しい電子素子への応用を提案していく考えだ。