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ポリマーブラシを常温・大気中・大面積で形成できる技術を開発―各種基材の表面の高機能化が可能に:産業技術総合研究所

(2018年3月19日発表)

 (国)産業技術総合研究所は319日、ポリマーブラシという特殊な構造の高分子薄膜を常温の大気中で大面積に形成できる技術を開発したと発表した。ポリマーブラシを基材表面に作り出す上で重要な重合開始層を簡単に形成できるようにすることによって実現した。各種基材の表面の高機能化が期待できるという。

 ポリマーブラシは、鎖状の高分子の一端が基材の表面に固定されて上に伸び、ヘアブラシのような格好をしている薄膜状構造体。

 高分子を基材表面から直接伸長させているため、高分子と基材の結合が強固で、従来の被覆材のポリマーコーティングなどにはない優れた耐久性や安定性、特異な表面機能を持ち、次世代の被覆材として期待されている。

 ポリマーブラシの作製には高分子形成の起点となる重合開始層が必要なため、その重合開始層を容易に大面積で形成できる手法の開発が求められていた。

 研究チームは重合開始基を持つ有機シランとテトラアルコキシシランを混合して均一な塗液をつくり、これを基材に塗布し、常温で乾燥させると重合開始層を形成できる技術を開発した。

 常温、大気中で形成できるため汎用の塗工手法が使え、容易に大面積化できる。

 ポリマーブラシはその特異な立体構造により、親水性や撥水性、撥液性、防曇性、低摩擦性、低生体分子付着性、ナノ粒子の凝集防止性、接着性、等々、多彩な表面特性を持つ。今回の開発により、各種の基材の表面にこうした高機能性を持たせたり、メッキ用下地層の作製に応用したりするなど、広範な用途開拓が期待できるという。