細胞傷つける酸化ストレス シナプス形成に一役:国立精神・神経医療研究センター/理化学研究所
(2026年6月15日発表)
細胞を傷つける“悪者”とみられている酸化ストレスが、脳の神経回路を作っている神経細胞をつなぐシナプス形成に一役買っている。(国)国立精神・神経医療研究センターと(国)理化学研究所は6月15日、このような研究結果を発表した。脳で精密な神経回路が作られる際の仕組みを分子レベルで明らかにしたもので、アルツハイマー病など酸化ストレスとの関連が指摘される脳疾患の理解につながると期待している。
脳ではシナプスが形成されることで精密な神経回路を作り上げ、それが学習や記憶、発達といった脳機能の基盤になっている。研究グループは今回、こうしたシナプスがどのように形成されるかを、実験動物のマウスと培養神経細胞を用いて解析した。
その結果、細胞を傷つけるために一般的に悪者とされている酸化反応が、脳の神経細胞内では局所的に起きるのを“合図”にしてシナプスの成熟を促していることを突き止めた。さらに、こうした局所的な酸化反応の活性化に、本来は細胞分裂を制御する酵素として知られる「Aurora-Aキナーゼ」という酵素が関与。その活性化には「S-グルタチオン化」と呼ばれる特殊な化学修飾が重要であり、そうした反応が細胞内の酵素によって精密に制御されていることも明らかにした。
また、酸素から生じる反応性の高い「活性酸素種(ROS)」によって細胞内での酸化反応が過剰になる「酸化ストレス」は、細胞障害を引き起こすことがよく知られている。このため一般的には“悪者”とみられているが、今回の研究では神経細胞が局所的に起きる酸化反応を利用してAurora-Aキナーゼを活性化。それによって、神経細胞同士をつなぐシナプスの形成や神経回路の形成を制御するという重要な役割を果たしていることを突き止めた。
自閉スペクトラム症やアルツハイマー病などでは、シナプスの機能異常や酸化ストレスによる影響が指摘されている。研究グループは今後、Aurora-Aキナーゼがその活性化によって脳の発達にどのように影響を与えるか、また加齢や神経変性疾患にどのような役割を果たしているかを解析、新たな治療法の開発などにつなげていきたいとしている。



