古人と現代人の歯石の微生物構成異なる―江戸時代中心にDNAを解析して明らかに:東邦大学/東京大学/農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2026年6月8日発表)
東邦大学、東京大学、(国)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、国際医療福祉大学などの共同研究グループは6月8日、江戸時代を中心とする日本列島の古人の歯の歯石に残されたDNAを解析、当時の日本人の口腔(こうくう:口の中)の「マイクロバイオーム」と呼ばれる微生物集団の特徴を明らかにし、古人の歯石に含まれている口腔内微生物の構成が現代人とは異なることを見つけたと発表した。
人間の口腔、腸、皮膚などには、多様な微生物が共生し、数十兆個を超すほどの細菌が存在するとされ、微生物同士で集まりを形成している。
マイクロバイオームとは、微生物の集まりのことで、食生活、衛生環境、生活様式などの影響を受けて変化し、健康にも関わっている。
このため近年、DNA解析装置の進歩も相まってマイクロバイオームの研究が注目され、古人骨の歯に付着している歯石から、過去の口腔内微生物の状況を調べる研究が進んでいる。
歯石は、歯垢(しこう)が石灰化して硬くなったもので、死亡当時の口腔内微生物をはじめさまざまなDNAが残されていることがあり、歯石中のDNAは過去の生活や健康状態を知る有用な情報源になる可能性を秘めていると見られている。
しかし、日本列島の過去の口腔内マイクロバイオームが時代や地域、文化などによってどう変化してきたのかについては、十分に解明されていない。
そこで今回、聖マリアンナ医科大学、九州大学、国立科学博物館、日本大学、土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアム、新潟医療福祉大学、鎌倉女子大学、沖縄県立埋蔵文化財センター、新潟大学、東京科学大学、の研究者と共同で江戸時代を中心とする日本列島各地の古人骨の微生物DNAを解析、過去の口腔内マイクロバイオームの特徴を明らかにした。
研究は、東京都、埼玉県、山梨県、福岡県、沖縄県の各地の遺跡や墓地から出土した近世の古人骨歯石と新潟県の現代歯石から集めた試料を解析してそれぞれの歯石中の微生物の構成、機能、系統を比較した。
その結果、古代歯石に含まれる口腔内マイクロバイオームは、現代の歯石のそれと異なることが判明、特に歯周病との関連が知られる古細菌が古代歯石で多く検出され、本州・九州地域と沖縄地域の間で微生物の構成に違いが見られ、地域ごとの生活環境や食習慣が口腔内微生物の構成に関わっていることが示された。
「この成果は、歯石に残されたごく微量のDNAが、過去の人々の食生活、地域性、文化習慣、さらには日本列島の人と微生物の関わりを検討するための手がかりになることを示すものである」と研究グループはいっている。



