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小型ドップラーレーダーによる突風観測の手法を開発:気象研究所

(2017年12月5日発表)

 国土交通省の気象庁気象研究所は125日、小型ドップラーレーダーによる突風探査の新たな手法(アルゴリズム)を開発したと発表した。冬場に発生しやすい突風被害対策として東日本旅客鉄道と共同で取り組んだ成果で、同19日から山形県庄内地方で実際の運転規制として使い始めた。

 突風は瞬時に吹く強い風のことで、竜巻や下降気流、上昇気流、乱気流などがある。破壊的な力が加わり人命や建物などに甚大な被害を度々もたらしてきた。

 しかし小規模で短時間に発生するため、地上の風速計などでは事前に捉えることが難しかった。気象庁の予報は突風の発生可能性を推定したもので、突風そのものではなかった。

 気象研は、庄内平野に設置してある気象観測網が捕らえたこの10年間の冬場の気象じょう乱を拾い出し、実態を詳細に分析した。その結果、突風には「降水」がつきもので、上空に「直径数km以下の渦を作る」こと、「海上で発生し上陸する」との3つの特徴を見つけた。

 これを基に突風探知の計算手法を開発し、渦のパターンと時間毎の強さ、移動速度、最大風速、予測進路などを算出することに成功した。

 突風が線路を通過する前に列車を安全な場所で停止させるための予測ができるようになり、庄内地域で運転規制に適用することになった。

 今後、全国のドップラーレーダー観測データから渦を検出し、地域や季節ごとに発生する異なる竜巻などに適用できる汎用性のある高速3次元観測に発展させたいとしている。