昆虫の翅の起源を解明―長年の論争に決着:筑波大学/福島大学
(2017年10月3日発表)
筑波大学と福島大学は10月3日、動物種の75%を占める昆虫が自由に空を飛び回る翅を進化の過程でどのように獲得したかを解明したと発表した。翅の本体と翅を動かす筋肉や関節がそれぞれ体の別の部分を起源とし、両者が合体して翅になったとする二元起源説を実証、これまでの起源論争に決着をつけた。
昆虫は地球上で最も繁栄している動物種だが、その繁栄を支えた翅の起源については大きく分けて二つの説があった。昆虫の胸部背側を覆う背板が側面にまで広がった側背板が起源という「側背板起源説」と、肢から進化したとする「肢起源説」だが、いずれも一長一短があり論争が続いていた。
そこで、筑波大の町田龍一郎教授と福島大の真下雄太 日本学術振興会特別研究員は、コオロギの仲間「フタホシコオロギ」が卵から成虫になるまでのすべての発生過程を電子顕微鏡などで詳しく追跡して調べた。
その結果、昆虫胸部を覆っている背板と肢の境界を明確に示すことができた。これによって、①翅の本体はこの境界より背板側にある側背板を、②翅を動かす筋肉や関節は境界より腹側にある肢の付け根部分「亜基節」を、それぞれ起源とするものであることがはっきりしたという。
翅の起源については、最近になって分子発生生物学的な研究から側背板起源説と肢起源説の折衷案ともいえる二元起源説が提唱されるようになっていた。研究チームは、今回の成果によってこの二元起源説がきわめて有力になったとみている。