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「例外」発見できる人工知能―革新的な材料開発に弾み:理化学研究所ほか

(2020年5月28日発表)

 (国)理化学研究所と(国)物質・材料研究機構、横浜市立大学の共同研究チームは5月28日、例外的な特性を持つ新物質の発見を得意とする人工知能(AI)を開発したと発表した。人間が予想もしない光吸収特性を持つ有機太陽電池などの新機能性材料開発のほか、幅広い分野での例外的な事象の発見に弾みがつくと期待している。

 理研の寺山慧特別研究員(現・横浜市立大学准教授)、隅田真人特別研究員、津田宏治チームリーダー、物材研の田村亮主任研究員らの研究チームが新しいAIを開発、「BLOX」と名付けた。

 研究チームは、これまで材料開発の分野で飛躍的な発展をもたらしてきた要因は、人間が予想もできない例外を発見してきたことにある点に注目。機械学習をうまく組み合わせて例外の度合いを数値化し、例外的特性を持つ物質を効率よく発見するBLOXを開発した。

 研究では、既に特性が分かっている既知物質のデータベースを機会学習させ、物質の特性を予測するモデルを構築することで未知物質の特性を予測した。さらに、実験や計算で既に検証済みの既知物質と機械学習で予測した未知物質のデータを、一つのグラフ上に図示できるようにした。その結果、既知物質や多くの未知物質の集団とは離れた場所に“仲間外れ”の例外物質が一目でわかるよう図示できた。

 実験的に、極微の世界の物理学である量子力学に基づいた分子シミュレーション技術とBLOXを組み合わせたところ、例外的な光吸収特性を持つ有機化合物候補がいくつも見つかった。このうち8物質について化合物を合成して特性を評価したところ、250nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以下や450 nm以上の波長の光を強く吸収するという例外的な特性を持つことが分かった。この特性は新しい色素や有機太陽電池などの機能性材料として有用という。

 研究チームは「BLOXを自動合成システムなどと組み合わせれば、自動で例外的物質が次々と発見される」として、研究者が全く想定していない性質を持つ物質の発見にも弾みがつくと期待している。