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歩行者に車の接近を早く知らせる―注意誘導の新手法:筑波大学

(2026年7月21日発表)

 筑波大学システム情報系の善甫 啓一(ぜんぽ けいいち)准教授ら研究グループは、街を歩行する人が、車接近の危険を早めに察知して、衝突事故の回避に役立てる注意誘導の新手法を開発したと発表した。車が近づくときに走行音が高く聞こえるという、人の知覚経験を生かして、「歩行者の危険察知を助ける交通安全技術」としており、社会での実利用に向けて研究を深めていくという。

 人や乗用車、バス、自転車などが混在する都市の道路で歩行者の安全を守る方法の一つとして、歩行者と車との間で、互いの位置や速度などの情報を共有する技術「V2P(Vehicle-to-Pedestrian)通信」の研究が進展している。歩行者にスマートフォンやイヤホンなどで車接近の危険を知らせる方法があるが、その場合、大きな警報音や強い振動で伝えるのは不快感や心理的な不安を与えるほか、頻繁な通知は“狼少年”扱いされ、無視される難しさがあるという。

 このため研究グループは、街の環境音のなかで、車の走行音により接近をより明確に認識できる方法を考案した。移動する車からの音は、例えば救急車のサイレンで聞くように、近づいてくるときに高い音に、遠ざかるときに低い音になる「ドップラー効果」に着目。車の接近時に、実際の走行音より周波数の多い高い音で、またより大きな音に変換して、イヤホンで人の耳に伝える音響拡張の技術を試みた。

 大学生・大学院生の計30人を対象に、実際の都市環境音と車両の走行音を用いて、バーチャルリアリティ(仮想現実)の空間をつくって実験。車両速度や走行音の周波数の倍率を変えて伝えると、実験参加者は車が実際よりも速く、近くに接近していると知覚し、衝突するリスクを早い段階で予測し、回避する傾向を示した。

 このことから周波数をシフトさせることで、歩行者の危険認識を高める方向へ誘導できることが分かったという。研究者は「周波数をz倍高めても、車の音として自然さは保たれている。クラクションを鳴らされ、びっくりするようなこともなく、歩行者は振り向かなくても分かる感覚。やさしく介入できる」と話している。

 研究グループは、今後、実際の街中に出ての歩行環境や、スマートフォン操作で周囲に注意が向けにくい状況下での有効性を検証するという。実用化を目指すこの技術が、聴覚に助けが必要な高齢者や視覚障がい者にも環境認識を広げ、安心につながる手段として期待される。