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長期間の宇宙滞在による平衡感覚器官の変化捉える―前庭器官のうちの「球形嚢」が選択的に変化:福井大学、筑波大学

(2026年8月25日発表)

 福井大学、筑波大学、岐阜大学の共同研究グループは8月25日、国際宇宙ステーションなどに長期間滞在すると、耳の平衡感覚器官のうちの「球形嚢(きゅうけいのう)」と呼ばれる前庭器官が選択的に変化することを世界で初めて明らかにしたと発表した。長期宇宙滞在後のリハビリテーションなどへの成果の応用が期待されるという。

 人は地球上では重力を利用して姿勢を保ち、安定的に歩行しているが、この重力情報を感知しているのが耳の奥にある前庭器官。宇宙空間では重力刺激がほとんどなくなるため、多くの宇宙飛行士は地球帰還後にふらつきや歩行障害などの平衡機能障害を経験する。

 今後、より長期間の宇宙滞在が計画される中で、その原因を明らかにし、障害を予防することが重要になっている。これまでの研究で、宇宙飛行による前庭機能の変化は知られていたが、耳のどの感覚器官が変化しているのか、その分子メカニズムはほとんどわかっていなかった。

 研究グループは、国際宇宙ステーション(ISS)で35日間飼育したマウスから、耳の前庭器官である球形嚢と卵形嚢を回収し、宇宙環境による遺伝子発現の変化を比較した。球形嚢は主に上下方向の重力や加速度を感じる器官で、卵形嚢は主に水平方向の加速度や頭の傾きを感じる。

 解析の結果、球形嚢では数百種類の遺伝子の発現が変化していたのに対し、卵形嚢では大きな変化は認められなかった。変化した遺伝子を詳しく調べたところ、神経細胞間の情報伝達を担うシナプス機能や、神経回路の適応に関わる遺伝子群が多く含まれていた。

 また、球形嚢では、通常は卵形嚢に特徴的な遺伝子発現パターンへ近づく変化が認められ、微小重力環境に適応するために分子レベルでリモデリング(再構築)が起こっていることが示唆された。

 さらに、ISSに157~328日間滞在した宇宙飛行士を対象に、耳の平衡感覚器官の働きを調べることができる検査を行ったところ、宇宙からの帰還直後に球形嚢の機能低下と、姿勢バランスの低下が認められた。その一部は、微弱な前庭電気刺激によって改善することがわかった。

 今回、宇宙環境に対する前庭器官の適応メカニズムが初めて明らかになったことで、将来の月・火星探査活動への成果の応用が期待されるとしている。