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毛髪にハリとツヤを与える―酵素の秘密を解明:茨城大学

(2021年5月14日発表)

 茨城大学は5月14日、髪の毛の表面を覆ってハリとツヤを与えているキューティクルに豊富に含まれるたんぱく質が作られる仕組みを解明したと発表した。生体内でたんぱく質作りをするのに欠かせない酵素の詳細な構造と性質を突き止めた。髪の毛がハリガネのようになる病気の治療薬や新しいヘアケア化粧品・育毛剤の開発などに役立つ。

 キューティクルはS100A3と呼ばれるたんぱく質を沢山含んでおり、これが髪の毛にハリとツヤを与えている。このたんぱく質には特殊なアミノ酸「シトルリン」が含まれているが、茨城大の海野昌喜教授らの研究グループは今回初めてシトルリン作りに欠かせない特殊な酵素「PAD3」の構造や働きを解明した。

 研究ではまず、ヒトのPAD3遺伝子を用いて大腸菌内でPAD3酵素を大量に作成、単結晶化したうえでX線解析などによってその立体構造や性質を詳しく解析した。その結果、この特殊なPAD3酵素の構造や性質が、毛髪に存在する仲間の酵素(PAD1、PAD2)よりも毛髪には存在していない類似酵素のPAD4によく似ていることが分かった。

 さらに、①PAD3酵素がカルシウムと結合することでその立体構造が変化し、髪の毛にハリとツヤを与えるアミノ酸「シトルリン」作りのスイッチが入る、②PAD3酵素にはカルシウムが結合する部位が5カ所あり、最後の一つが結合しないと酵素として働く活性型にはならないこと、などが明らかになった。

 研究グループは、これら結果が「毛髪が角化する機構やキューティクルが形成する機構を解明することに貢献する」としており、今後、新しい美容製品・育毛剤などの開発や高齢化社会でも美しさと若々しさを保つQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上に役立つと期待している。