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新型コロナ恐怖に新指標―日常生活への影響を客観判断:筑波大学

(2023年1月13日発表)

 筑波大学は1月13日、新型コロナ感染への恐れがどこまで大きくなると日常生活に支障が出るかを判断する基準を明らかにした。日本で2万5,000人を対象に行われた全国アンケート調査の結果を世界的に知られる新型コロナウイルス恐怖尺度「FCV-19S」(最大35点)と突き合わせた結果、21点以上になると日常生活に支障が出ていることが分かった。客観的な指標が得られたことで、コロナ禍でのメンタルヘルス対策などに役立てられるという。

 新型コロナ感染への恐怖から日本では当初、自殺者数が増加したことが報告されたほか、社会経済的な活動にも支障が出るなど、人々のメンタルヘルスへの影響は大きな問題になった。ただ、感染への恐怖がどこまで大きくなると社会生活に支障をきたすのか、客観的な判断基準がなかった。

 そこで筑波大の太刀川 弘和(たちかわ ひろかず)教授らの研究グループは、30カ国以上で感染への恐怖を測定するために採用されている新型コロナウイルス恐怖尺度「FCV-19S」を用い、何点以上であれば問題となるのかの指標づくりに取り組んだ。このため、2021年9月から約1カ月かけて実施された既存の「新型コロナによる社会・健康格差評価調査研究」で得られた全国オンラインアンケート調査データを詳しく分析した。

 具体的には2万6,286人の性別や年齢、学歴といった基礎情報とともに、新型コロナへの恐怖によって日常生活に支障が起きているかなどの回答をもとに、恐怖尺度を数値化した。その結果、新型コロナへの恐怖が日常生活に支障をきたしているかを判断するには、恐怖尺度が21点以上であることがふさわしいことが分かった。

 研究グループは、この数値が新型コロナ感染への恐怖から社会経済活動の影響を受ける人々を見極める客観的な指標になるとして、「コロナ禍におけるメンタルヘルス問題への対策や、『コロナ恐怖』に関する研究が進展する」と期待している。