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長期宇宙滞在と人工重力―欠かせぬ0.67G:宇宙航空開発研究機構ほか

(2026年3月16日発表)

 宇宙で長期間暮らすには最低でも地表の67%に相当する0.67Gの重力が必要であると、宇宙航空開発研究機構(JAXA)と筑波大学は3月16日、国際宇宙ステーション(ISS)での実験結果を発表した。宇宙長期滞在ではこれだけの人工重力を用意しないと筋肉の量と機能が低下、活動を維持できなくなるという。米国を中心に有人月探査「アルテミス計画」などが進む中で、長期にわたる有人宇宙探査の医学的リスクを評価し対策を考えるための重要なデータになるとしている。

 研究グループにはJAXAと筑波大のほか、東北大学、米ハーバード大学なども参加、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」に搭載した可変人工重力研究システム(MARS)を用いて実験を進めた。

 実験では、重力が①ほとんどゼロの微小重力、②火星表面と同等の0.33G、③火星と地球の中間地点相当の0.67G、④地上相当の1G、という4種類の重力環境でマウスを一カ月間飼育、マウスの体にどのような変化が起きるかを調べた。筋肉の量や組織構造、筋線維のタイプ、筋機能、遺伝子の働きなどの変化を総合的に解析した。

 その結果、ふくらはぎの後ろ側にあって重力に特に敏感なヒラメ筋では、筋線維の太さ(筋量)が火星と同じ0.33Gでは大きな低下はなかった。しかし、持久力や日常動作に必要な「遅筋」が瞬発力に必要な「速筋」に置き換わる変化は防ぎきれず、維持するためには地球と火星の中間点に相当する0.67Gが必要なことが明らかになった。握力測定や筋肉の電気的特性の評価でも、筋肉の働きを維持するには同じく0.67Gが必要だった。

 これらの結果から、研究グループは「筋量の維持に必要な重力レベルよりも、筋機能を保つためにはより高い重力が求められる」という。今後はさらに「重力レベルごとの筋肉応答の違いを分子レベルで解明し、筋委縮や筋機能低下を防ぐ対策法の開発につなげていく」として、将来の月・火星探査だけでなく加齢や疾患に伴う筋力低下の理解と予防にも役立てられると期待している。