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植物の鉄吸収機能が高まる仕組みについて新知見―鉄欠乏土壌でも育つ農作物の育種に期待:安田女子大学/琉球大学/理化学研究所

(2026年3月3日発表)

 安田女子大学と琉球大学、(国)理化学研究所の共同研究グループは3月3日、アブラナ科植物が鉄吸収を促進するために分泌する鉄可溶化物質「クマリン」を細胞内に取り込む輸送体を、世界で初めて同定したと発表した。鉄欠乏土壌でも育つ農作物の育種などへの応用が期待されるという。

 鉄は植物の成長に不可欠な栄養素だが、土壌に豊富に含まれている鉄の多くは不溶性の三価鉄として存在しているため、植物は鉄を直接吸収、利用できない。このため植物は鉄不足に対処する仕組みを進化させてきた。

 例えばアブラナ科のシロイヌナズナは、鉄欠乏状態になると、鉄と結合して鉄を可溶化するクマリンを根から分泌し、鉄を吸収する。その際、鉄欠乏の根の表皮細胞や皮層細胞から、排出輸送体によって、クマリンの一種であるフラキセチンを分泌することがこれまでに分かっている。しかし、これらの細胞にクマリンがどのように集積されるのか、そのメカニズムは分かっていなかった。

 研究グループは、鉄欠乏条件におかれたシロイヌナズナの根で遺伝子発現が誘導されるNPF7.2 という輸送体仲間の一種に着目、NPF7.2の役割を調べた。その結果、NPF7.2は鉄欠乏に応答して根の表皮細胞と皮層細胞に発現することが分かるとともに、NPF7.2を発現させた酵母細胞ではフラキセチンを効率よく細胞内に取り込む活性が検出された。

 これらのことから研究グループは、 NPF7.2が、根の表皮細胞や皮層細胞にクマリンを積み込むためのクマリン取り込み輸送体であることを見出した。

 NPF7.2はクマリン、特にフラキセチンを根の表皮細胞と皮層細胞に集積させる輸送体として機能し、その働きにより根から土壌へのクマリン分泌、さらには根による土壌からの鉄吸収が促進されることが明らかになった。

 今後、クマリンの効率的な輸送・分泌を強化する技術を応用することで、鉄欠乏に強い作物の開発や、作物の鉄含量を高めて栄養価を向上させる技術への展開が期待されるとしている。