温暖化で日本の高山帯の紅葉の色付きが弱くなる―シナリオでは紅葉の赤みが15%減少すると予測:国立環境研究所ほか
(2025年9月8日発表)
温暖化に伴う春の雪解けが早まると、葉が開く日が早まり秋の紅葉の色づきが劣え、赤みが15%減少するとの予測が出た。(国)国立環境研究所気候変動適応センターの小出 大 主任研究員と(国)森林総合研究所、信州大学の研究チームが9月8日に発表した。高山帯の紅葉観光などの予測に役立ちそうだ。
山を彩る紅葉の景観は、生態系が人類にもたらす文化的恩恵の一つであり、重要な観光資源になっている。これまでは気温と日射量から紅葉開始時期などが調べられてきた。それだけでは分からない課題として、①色づきの強さ、②広域観測、③標高の高い高山帯での研究が不足していた。
近年日本の高山帯で紅葉が見られない年が出現していることから、「色づきの強さ」と気候変動との関係解析が必要とされるようになった。
そこで研究チームは、大雪山旭岳(北海道)、北アルプス室堂(富山県)、中央アルプス極楽平(長野県)の3か所を対象に、紅葉の色づきの強さのパターンとメカニズムを解析し、将来の気候変動に伴う色づきの変化の予測に挑戦した。
定点カメラの画像データから調査地ごとに10か所の解析範囲を設け、主に紅葉のウラジロナナカマド、黄葉のダケカンバ、ミネカエデの色づきの強さ(VARI値)を計測し、毎年の最大のVARI値を解析した。
色づきの強さは、気象庁のアメダスデータや農研機構の農業気象データから最も深い積雪データと、春に葉の開いた日(展葉日)などから「線形混合モデル」を作り、その中でも説明力の高いモデルを探した。
「融雪日の予測モデル」や「積雪予測モデル」を作り、温暖化シナリオなどから広域の「融雪日の将来予測」を作成した。これらのモデルを順次発展させながら融雪日から展葉日を予測し、「展葉日から紅葉の色づきの強さ」の予測を導き出した。
モデルによると、雪解けが遅く展葉日が遅いほど紅葉の色づきが強くなった。これは葉の寿命による影響で、春に緑色と黄色が合成されたのち、秋に緑色の色素が分解され赤色色素の合成で紅葉の色が現れる。
ところが暖冬で雪解けが早くなると、展葉日が早い年では古くなった葉で紅葉を迎えることになり、色素合成や分解がスムーズに進まないため、色づきが悪くなると推定できる。
観光資源としての紅葉の価値に対して新たに「紅葉の色づきの低下」という視点を開拓した。
色づきの理解を深めることで、シーズン前の紅葉の色づき予測や、ベストな紅葉スポットの探索に役立つとみている。