誕生直前の惑星動画化に成功―電波望遠鏡の画像つなぐ:総合研究大学院大学/国立天文台/理化学研究所
(2025年9月24日発表)
太陽などの恒星の回りを巡る惑星はこうして生まれる。総合研究大学院大学を中心とした国際共同研究チームは9月24日、南米チリにある巨大電波望遠鏡「ALMA」で7年間にわたって周囲に渦巻き状の構造を持つ恒星を観測、その静止画像をつないで惑星が生まれる直前の様子を動画にすることに成功したと発表した。
総合研究大学院大学兼国立天文台 大学院生の吉田 有宏さんが率いる国際共同研究チームが研究対象にしたのは、日本からは南の地平線近くにあって見るのが難しい星座「おおかみ座」にあるIM星の観測画像。惑星は若い星を取り巻く原始惑星系円盤と呼ばれる渦巻き状の天体から生まれるが、この星の周囲にはそうした構造があることが知られている。
研究チームが試みたのは、ALMAが2017年から7年間にわたる4回の観測でとらえたこの若い原始惑星系円盤の静止画像をつないだ動画作り。少しずつ形を変えた何枚もの絵を指先ではじいて捲(めく)り、動いて見えるようにするパラパラ漫画のようなものだ。
この動画作りをした結果、若い星の回りに渦が巻き付くようなダイナミックな動きが見えることが分かった。さらに詳しく調べたところ、渦が巻き付く際の速度が、惑星が誕生する直前の理論的な予測結果と一致していた。そのため研究グループは「この原始惑星系の円盤が惑星形成の直前にあると考えられる」と結論付けた。
仮に惑星が誕生した後であれば、理論的には渦巻きは形を保ったまま惑星とともに回転し続けるとされている。そのため、渦巻きの存在だけでは惑星が生まれる前か後かを区別することは難しいとされていた。
吉田さんは「渦巻きが本当に動いているのが見えたときには思わず声が出てしまいました。」「今後は惑星形成プロセス全体のドキュメンタリーを完成させたい。」と話している。