大阪で起きた水質事故の原因物質を特定―合成着色料の流入で発生:国立環境研究所
(2025年7月14日発表)
(国)国立環境研究所(国環研)は7月14日、今年3月に大阪の河川で発生した水質事故で川の水を青色にした原因物質を特定したと発表した。
この事故は、淀川(よどがわ)水系に合流する猪名川(いながわ)で生じたもので、下流に位置している浄水場の取水を4時間半にわたってストップさせてしまう影響が出た。
水質事故とは、このような化学物質などが水環境に入って水が汚染される事故のことをいう。
そうした水質事故は、毎年全国で200件程度発生しており、たとえば2012年には利根川水系でホルムアルデヒド系の物質が水質基準値を超えて流入する水質事故が起こり広い範囲で取水停止が発生している。
今年3月に池田市(大阪府)の水道水源である猪名川で発生した水質事故は、規模の小さなものだったが、原因物質は特定されなかった。
そこで、国環研の研究グループは、その川の水を青色にした原因物質の特定に取り組んだ。
研究は、水質事故時の青色に着色した川の水の提供を池田市から受け、そのサンプルをフォトダイオ-ドアレイ検出器が組み合わされた「液体クロマトグラフ高分解能質量分析計」で分析した。
この方式の分析計は、試料中の成分を成分ごとに分離して検出し物質の分子式まで推定することたができるとされている最先端の分析機器で、今回の測定では波長630㎚(ナノメートル,1㎚は10億分の1m)付近に最大の吸収を持つスペクトルが得られ青色着色の原因と見られる成分を推定することができた。そしてさらに解析を進めて最終的に青色の原因物質が食品添加物などに使われている合成着色料の一種で「青色1号」と呼ばれている「ブリリアントブルーFCF」であることを突き止めた。
ただ、サンプルが比較的少量だったことから、排出源を特定するまでには至らなかったという。
国環研は、得られた一連の研究結果をサンプル提供を受けた池田市の上下水道部に提供した。
水道水源で起きる水質事故の種類や発生原因はさまざまで、原因物質が特定されていない水質事故の方が多いといわれている。国環研は、「今後この研究手法をより多くの水質事故に適用し、改善を行っていく予定」と話している。